9/1に受講した駿台教育研究所の
『未来学力トライアングル2024-教科の壁を越えて』
のレポートですが、今回は前編の続きです。

本内容に進める前に…雲(師)は、『数学者の思案』を勧めていました。(私は読了済み)
『数学者の思案』は、数学者の内容だけではなく、大学入試の作問と採点の話題があるので、その辺に興味がある関係の方にも一読する価値はあると思います(岩波科学ライブラリーは、ページの割に少々お値段がしますが…)。
東北大学の採点講評についても触れています。

本内容に戻して
雲(師)は、2019年に早稲田大学理工学部で出題された英語(話題:数学的帰納法)に関するお話をしていました。問題は、こちらのリンク先のp.9です。出典(書籍):Precalculus-3rd

巷で『早稲田理工の英語は大学受験の英語で一番難しい』と言われているらしく、雲(師)が気になったことから、今回の講座で紹介するきっかけになったそうです。というか、そういう風に流布している方(多分、YouTuber)がいるというだけの話ですが…。

おそらく「理系科目(特に数学)に拒絶反応を持っている人」にとって、早稲田理工の英語は大学受験の英語で一番難しい…が、真実なんだと思います。要は「背景知識が全くなければ文章は読めません…それが英語の場合は、TOEIC満点100回を以上取った講師や海外の大学院を修了したNativeであっても」…ってことなんでしょう。
講座で雲(師)が、表紙が赤い過去問題集や表紙が青い過去問題集の解説について触れていましたが、私が見ても泡吹いて倒れそうなくらい、解説が…【以下自粛】…でした。

数学に必要な英語は「(数学科の人間にとっては、英語がたいしてできなくても)簡単」と言われています(注1)が、数学科以外の方にはそうとは限りません。
注1:私が言っているのではありません。例えば、東大のK先生が言っているので、この発言に意義のある方はK先生にお願いします。

英語が苦手で英作文が絶望的にダメな私でも、東北大学大学院理学研究科(数学専攻・博士課程前期)受験時の英作文の問題「ε-δを使った証明」はスラスラかけたので、(数学に必要な英語は)シンプルなんだと思います。
ただし、それがTOEIC満点を100回以上取った講師や海外の大学院を修了したNativeであっても、数学が全くできないド文系なら1行も書けないと思います。それはおかしなことでも恥じることでもなんでもありません。

おかしなのは、日本人の異常なまでのNative好き、もしくはNative信仰なんだと思います。「Nativeなら英語の問題なんでもできる説」みたいに冗談が過ぎる企画を、冗談とわからず割と真顔かつエンドレスでやり続けているような感じがしてなりません。
このような事案は、母国の言語に置き換えて「冷静に」考えた方がいいと思います。

(下に書くのは代ゼミの富田先生の受け売りですが…注:Nativeを2つの意味で使います。アメリカ人・イギリス人など → 英語Native1、日本人 → 国語Native)
私たちは日本人ですから、ガチの国語Nativeなわけです。
ということは(英語Nativeさんなら英語の問題は何でもできます説に準えるなら)国語Nativeなんだから(大学入試の)現代文は何でもできるでしょ…ってことになりますが、そうなりますか?
例えば、東大の現代文、日本人ならみんな満点取れるんでしょうか?
取れないですよね。それは別におかしなことじゃなくて普通にありえることです。(みんな満点を取ったらテストになりませんが…)
その状況に対して「国語Native(←日本人ことです。)でも満点取れない東大の現代文は悪問だ〜」ってなるでしょうか?
ならないでしょう(反語)。日本人が解けない国語(現代文)の問題なんて、掃いて捨てるほどあります。
東大の現代文の例なんか出さなくても、東北大クラスの問題でも受験生どころか予備校講師が全然読めていない現代文の問題(注2)が普通にあります。
注2:東北大学2018年現代文第一問、出典:入不二基義『足の裏に影はあるか?ないか?哲学随想』で、この問題に対する予備校講師の解説が酷かったと述べているのは、著者の入不二基義氏の発言から。著者本人による東北大学の解説は『問いを問う ――哲学入門講義』の付録にあります。
注2の注:この発言はゲンロン「予備校文化(人文系)を「哲学」する」にあります。

こういった例が現代文ならわかるのに、英語になった途端わからなくなるのが日本人なんです。
「英語Nativeなら英語の問題はなんでも解けるはず。英語Nativeが解けない問題は悪問だ〜」なんて発言はおかしすぎて倒れそうですが、発言している当人は興奮さめやらぬ状況だったりするわけで、「ご冗談でしょう、◯◯さん」と宥めても大暴走した興奮は止まらず、大抵地獄の世界線が始まるわけです。

Nativeと言ったらカッコ良さすら感じて、謎の国民性を発揮する日本人
もういい加減「Native信仰」はやめた方がいいんじゃないかなぁ〜と、講座を受けながら実感した次第です。

と話題があっちこっちに飛んで、当初の目的もすでに忘れかけていた気がしますが、そのあたりのことは置いておきまして…。
私は今回の講座をスケジュール的に運よく受講できましたが、社会人ですと中々難しいですよね。
この講座のような予備校文化にノスタルジーを感じる方は、ゲンロンで公開収録された『予備校文化(人文系)を「哲学」する』の内容がど真ん中で興味深いと思います。

5時間で2000円弱ということで『未来学力トライアングル2024』と比較すると、1/6の価格かつ1.5倍の時間になりますから、コスパはいいと思います。ですが、有料講座なので、内容が自分の求めているものかどうか吟味したいっていうのが「生き物のサガ」だと思うので、冒頭を見たい方はYouTubeをどうぞ。(冒頭の30分が無料で視聴できます)
本講座のレポートはこちら完全文章版(入不二基義氏のページ)はこちらです。
入不二基義氏の入不二は辞書に登録しない限り変換されないので入力に苦労する。

最後に、もう時期変更に迫られる「東京医科歯科大学」を激写してきました。