12月の頭は2つの論文の投稿でバタバタでしたが、山場を乗り切ったはずなので振り返りを…
(やや長文です。査読の結果がどうなるのかは別として…。投稿はしました。)

11月23日から26日の間、諸々のお仕事を行いに、山口→東京→仙台→東京→山口と移動しました。
メインは『東北数学教育学会』の発表・聴講と博士課程研究室の飲み会です。

今回の学会で初めて東北福祉大学(ステーションキャンパス)に行きました。
久しぶりに仙山線に乗りました。終着駅は難読漢字の愛子駅。愛子駅読めますか?
(しかし、東北福祉大学のステーションキャンパスは「東北福祉大前」駅直結で羨ましいですな。)


愛子駅の「愛子」の読みは「あやし」です。

私の学会発表は、相変わらず数学の先生に向かって統計の話ばっかりするというミスマッチっぷりですが、
中学・高校(そして大学)の授業で統計やデータサイエンスの授業を行いなさい!
…と内閣府が言っているので、気負いなく話をしています。

あ、あと学会の発表のスライドは、相変わらず現地調達です。
入念に発表の準備をして学会に臨んでいる先生方に対して失礼極まりない私ですが、
100%の準備…なんて言ってたら、いつまで経っても学会発表ができないです。
未完成な部分は質疑応答で補い完成させると割り切っています。(ちなみに今回は今年8回目の学会発表)

ちなみに私、数学科出身にしては、厳密性にうるさくないほうの人間だと思っていますが、
今回の学会の発表を聴講して、あまりにも気になる発表があったので突っ込みました。
(私がかつて通った某科学的教育グループのO先生だったら完膚なきまでにボコボコにすると思われる)

その発表者は、おそらく現職の中学校の数学の先生で、ある教職大学院に在籍、
発表内容は三角形の内角の和に関する授業の実践報告でした。

詳細は、画用紙で作った三角形にはさみを入れて、角度が180°になることを証明する???ものでしたが、
実践している生徒の中に「三角形の内角の和が200°になった」と話す者がいて盛り上がったようです。

その盛り上がりを収集させる過程で
「三角形の内角の和が180°以外になることはありません」
と発言したそうです。で、納得がいっていない生徒に対して、あ~でもないこ~でもないって
…と説明しつつ、最終的には「強引」に「三角形の内角の和は180°」しかないことを納得させたらしく、
その過程を詳細に発表していました。

そんな発表を聞くと数学科出身の人間なら「ん?」と思うわけで、例に漏れず私も
「中学校の教科書、学習指導要領、教師用指導書では
『三角形の内角の和は180°しかない』って書いてあるんですか?」と質問するわけです。

私の質問に対して「そういった強い書かれ方はしていないと思いますが、多分そういったニュアンスの書かれ方はしていると思います」
…みたいなボカした答えが返ってきたので「三角形の内角の和が180°より大きい場合も小さい場合もある(注)ので、
たぶん『三角形の内角の和は180°しかない』という書かれ方は教科書等にされていないと思われますが」…と返答しました

注)三角形の内角の和が180°   ⇒ ユークリッド幾何
三角形の内角の和が180°を超える ⇒ リーマン幾何
三角形の内角の和が180°未満   ⇒ ロバチェフスキー幾何

授業っていうのは怖くて、ちょっと間違ったことを説明しても、勢い・ノリで押し切れたりします(本人にはそう感じる)。
しかし、(習った生徒が)間違った内容で定着してしまうと、後で修正するのは大変になるので、教職大学院に通う現職の先生なら、
些細と思うかもしれない表現にこそ注意した方がいいと思われます…みたいな感じでオブラートに包み倒してお伝えしました。
(この場に、某科学的教育グループのO先生がいたら…きっと地獄絵図になったに違いない)

先生も人間なんで「分からんものは、分からん」って言えばいいんですが、中学校の先生にそれは難しいらしいですね。
そんな話を、大学院の研究室(教育測定の研究室)で現職教諭(小学校、中学校数学の社会人大学院生[修士])の2人の先生が言っていました。

中学校の先生も忙しいとは思いますが、将来的に阻害することがないように…とは思ってコメントさせて頂きました。
おそらくはこの発表、研究授業かなんかで実践された様子を学会発表しているんですが、
授業で話す内容を1分単位まで細かく準備して完璧なものをお見せ(いわゆる見世物的授業)したかったんだと思います。
きっと、生徒は担当の先生のシナリオから外れた回答をしたんでしょうね。
(研究授業は、驚くほど準備している授業を拝見するので、この発表者も相当準備して臨まれたと思います。
そういう点は、見習わなければと思っています。学会発表すら未完成で行うほど、初心を失い倒している私なので)

想定外の生徒の回答をうまく料理するのは、失敗を含めた経験が必要なのかもしれません。
その辺の諸々のお話を、発表者の担当教官と議論もしました。

もちろん数学というのは厳密性を追求すると、とことん難しくなってしまう(それが原因で、生徒を置き去りにすることもあり得る)
ため、その場の調整は色々あると思います。発表された先生も葛藤はあったと思われます。
学会は、こういう実践内容を議論する場でもあると思っているので、私自身にとっても大変勉強になりました。