最近「科学的根拠」って流行っていて、エビデンスと称する数値を見かけますが、大体「科学的じゃない」んですよね。
というのも「科学的根拠」って必ず「前提条件」があるんですけど、驚くほど「前提条件がガン無視」されているんです。
チェスの世界ではファーストチェス理論というものがあります。
「5秒で考えた手」と「30分かけて考えた手」が約86%同じ結果だったというものです。
なので、要は即断即決しましょうって、ことになりますね。
最近は数値を使って「科学的根拠」って言うのがどうやら流行っているようで、こう言う数値付きの理論をよく見ますけど、実務で統計をやっている人間からすると、サンプルサイズ(注)がわからない時点で「もはや」怪しさ満載です。
ビジネスの世界では「ファーストチェス理論」を根拠にして「意思決定は即決が9割」的なキーワードも見かけますが、この事実はあくまで「チェス」の話なので、チェスの場合で成り立っている話を一般的に成り立つって言われても…、数学をやる身としては…困惑するばかりです。
(注)サンプルサイズ(標本の大きさ、サンプルの大きさ):調査や研究において、母集団(調査対象全体)から抽出する標本の大きさのこと。これを「サンプルの数」というと、発狂して「あなたは統計を全くわかっていませんね」とマウンティングしてくる一部の統計界隈の方がいるので注意してください。こういうことを一々マウンティングする界隈の方っていうのは、その程度の器しかないって話しなんですが…。
もちろん参考にするのはいいと思いますし、実際そうなっていることもあります。
例えば、ある意思決定をする際に、普段から考えて・考えて・考えまくって思考の限りを尽くした(これを熟慮といいます。)人が、意思決定をする場で「えいや」っと決めることは往々としてあります。意思決定をしている場だけ切り取ってみると「5秒の意思決定」ですが、それは初見のものを5秒で意思決定しているのではなくて、可能な仮設思考をやり尽くしている(熟慮をしている)という前提条件があるんです。
だからこういった数値・根拠をみるときは根拠以上に前提条件(その中に、サンプルサイズを含みます)を確認しないといけないんです。
メディアにのる記事やニュースは、誌面の都合等で前提条件が切り取られる場合があって、時としてそれが事実と反することもありますが、そのときは前提条件を見過ごされている可能性が高いです。
…と、これだけで止まると、批判だけしているように見えてしまうので「即決がいい」という側の意見も入れておくと…熟慮した上での意思決定というのは、損得勘定などが考慮されて一貫性がなくなります。要は利己的な意思決定をしてしまうんですが、これを熟慮の悪魔(The Devil in the Deliberation)っていいます。
Nordgren, L. and A. Dijksterhuis (2009). The devil in the deliberation: Thinking too much reduces preference consistency. Journal of. Consumer Research, 36, 39–46.
まぁ今回の数値も分かりやすくていいんですけど、極端に分かりやすくてシンプルなものって大概一部にしか通用しないんですよね。
まぁこの手のキーワードは定期的にバズりますから、頻繁に使われるんですけど、捉え方を間違えると詐欺にもなりますから注意が必要ですね。