大学の数学科にあっている人・あっていない人

高校で数学が得意だと大学でも数学をやりたい…と言って
数学科を選ぶ人が多かったりしますが、下調べしてから選んだほうがいいと思うんです。

高校までの数学は問題を演習が中心だったりしますが
数学科の数学は証明中心となり、哲学のような感じになります。

もちろん高校数学でガリガリ証明するのが好き…という
希少な人に数学科はあっていますから、
数学科に来てもらいたいのですが、多分ほとんどいないです。
高校数学の証明、高校生はほとんどできないんですよ。

…というのも、
私が大学受験生の頃「加法定理の証明」という教科書に書いてある
超絶基本的な証明問題が東京大学で出題されましたが、
東京大学の受験生は「合格者も含めて」ボロボロだったそうです。
東京大学の受験生ですらその状況ですから、京都大学でもきっとボロボロ
他の旧帝大で出題されたらボロボロどころか壊滅的な結果だったと思います。
難関私立大学の受験生なんか目も当てられない…そんな結果が浮かびます。

『大学への数学』に載っている難しい問題は解けても
教科書に書いてある超絶基礎的な証明問題は、ほとんど解けない。
それが、今も昔も(模試の偏差値の高い)高校生のスタンダードだったりします。

東京大学の素晴らしいところは、それを受験問題で教えてくれたことです。
多くの受験生は証明する機会なんてないから、大学の数学科に来て挫折するんです。
もちろん挫折しても立ち直れればいいんですが、ほとんどの人は挫折しっぱなしです。

だからこそ、大学の数学科を目指している人は、
「高等学校の数学で何が好きなのか」を理解して、
数学科に行くのか、数学科以外に行くのかを選択した方が、大学生活は豊かなものになると思います。

特に、高校の数学で問題を解くのが好き ← 数学好き高校生の多分9割がコレ
な場合は、数学科に似た学科の方が大学生活は充実するかもしれません。

例えば、データサイエンス学科や統計系の学科、情報系の学科です。

統計は、数学じゃないというの意見もありますが、
統計も数理統計に限らず確率論(測度論)をバックグラウンドとした理論的な部分もあり、
(数学的な)理論を学習するのは面白いんです。

もちろんデータ分析を主として「応用する(利用する)」統計もありますよ。
多くの人はこの「応用する(利用する)」統計の方を知っていることと、
統計は数学じゃないっていいますが…それは統計の一側面しか見ていないのだと思います。

他に、私の時代から言われる「物理学科」や「経済学科」も
高校数学が得意な人はおススメです。
物理学科は主に解析系…となりますが。

経済学科で数学?と思った方もいるかもしれませんし
経済学科に入ると『なんで数学ばっかりなの!』と言って
大学を編入したり、辞めたりする人がいるほどで、
特に微分(微分方程式を含む)、行列、確率・統計をよく使います。

…というより、微分と行列を使わないで経済学科を卒業するのは難しいです。
YouTube等で、数学ができなくても経済学科は何とかなる
って言っている人がいますが、参考にしないほうがいいです。確実に火傷します。
就職率が高いから経済学部…という安易な選択をする方を見かけますが
経済学部に限らず就職率が高い学部は存在します。
数学が苦手、数学をやりたくないのであれば、経済学部以外の学部を選んだ方が
大学生活は豊かになると思います。

追伸:高校で解く数学が好きで、大学で挫折した人って、
就職先はどこに行くと思いますか?

真っ先に選ぶ職業が「高校の数学の先生」だったりするんです。
(まぁ私の母校ではの話ですが…。)
そのため、悩ましい数学教育が展開されていたりします。

高校の数学の先生で「変なこと」にこだわる人を、たまにではなくそれなりに見かけますが、
多分、大学の数学で挫折して、立ち直れなかった人ではないのかな?
…と思っています。
「大学の数学で落ちこぼれた原因は高校数学にあるに違いない」とか思って、
変なところに厳密…ではなく、こだわりが入ってしまうのではないかと。

例えば大学入試でロピタルの定理を「×になるから」使っちゃいけない
…などとおっしゃる先生です。

私の恩師(大学の先生)にも、知り合いの数学者にも
そんなこと言っている人は見かけませんが
それなりの数の高校の先生が言っている…と学生から聞きます。
(偏見ですが…教員養成系出身の先生にこの傾向が強い気がします。)

多分、ロピタルの定理を使って×になっているのではなく
ロピタルの定理の使い方が間違えているから×になるのだと思いますが…。
いきなり分母と分子を微分しちゃあいないですか?
ロピタルの定理を使える条件を答案に書いていますか?

で、高校の先生はこんなことも言うらしいです。
「ロピタルの定理」を使ったら、問題が簡単になるからつかっちゃダメって。
いやいや、簡単な解き方があったとしても使って全然問題ないですよ。
それが、いわゆる1/6公式と呼ばれるものであっても…。

入試問題というのは、受験する生徒がどんな答案をするのかも想定して
議論して吟味して作成されているはずです。
簡単なテクニックだけで解かれる問題が嫌だったら、
そういう問題を出題しなければいいだけのことです。

ロピタルの定理を使うとかえって面倒になる問題とか、
1/6公式を使えないようにする問題を作ることなんて容易にできます。

公務員試験では、天秤を使ってとく謎の解法が流行っていますが、作成者も気づいたんでしょう。
天秤の解法を使ったら大変になる「超簡単」な問題を出題し始めました。

それでも、公務員予備校の先生は天秤を使いたがるようで
ある受験生の答案を見たら天秤だらけになっていたのをかつて見たことがあります。