私が高校2年生の頃、国民的某一斉試験の数学IIBでcosθの合成が出題され「日本列島が沸いた」ことがあります。それほど当時の受験生はcosθの合成が「びっくりするほど」できなかったんですね。
あまりにもインパクトが強すぎたせいか、その後「ほぼ全国一斉」で(大学受験向けの)数学の授業では次のいずれかもしくは両方が行われました。

①「三角関数の合成は、三角関数の加法定理の逆である」という(当然すぎる)指導
②「cosθの合成をsinθの合成のように公式化して教える」指導
(特殊:内積の定義を使う、例外:「cosθの合成が出たら捨てろ(諦めろ)」と指導する)

私が高校3年・浪人生の頃、①と②の指導を耳にタコができるくらいされました。
で、あれだけ日本列島が沸いた内容だから、25年以上たった今の受験生はさすがに大丈夫だろうと思っていたら、某SNSをみたところ驚きました。25年以上経った今も「定着されていない」ことに…。

もちろん①や②の教育でcosθの合成「だけ」はできますが、私は少しばかり気になっていまして…
例えば①で教える場合、生徒(受験生)はどういう行動を取るのかを検討すると
「sinθの合成は(教科書にある)図を使って解き(公式化された解き方、別名:パターン解法)、cosθの合成は①に従って解く(加法定理の逆を利用する)」ことになります。つまりこの方法だとsinθとcosθで合成のプロセスが(生徒・受験生の中で)違うんですよ。
で、こうなる理由ですが、なんだかんだ言って、理解なき暗記(解法のパターン化)が原因だと思います。学術的・数学教育の文脈で言うと、スケンプの「用具的理解(道具的理解)」に留まっているんですよね。

もちろんsinθの合成もcosθの合成も①に従って解く(要は教科書に記載されている図を全く見ないで、式だけに注目して解く)という「お時間に余裕がある方がする方法」もありますが、(学習としてはいいと思いますが)時間がかかると思います。

②の方法、う〜〜〜ん。要は公式の丸暗記(につながる生徒がいそう)ですが、いりますか?
(このポストに対して「私はcosθの合成を『教えて』います。」と、堂々と宣言されている方もいましたが…)
10年に1回くらいしか出ない問題のために覚える…(あ、それは言い過ぎか? 極方程式あたりでcosθの合成が必要かな?)のは、なんか重要性に欠ける気がします。まぁ〜英語なんかは、単語集に載っているのに全くお目にかからない単語…なんていっぱいあるでしょうから、いいのかな?
他に、内積を使う方法もあって、私が某科学的教育グループに通っていた頃に習ったことがありますが、何か「アリ」を退治するのに「バズーカ」を使うくらいオーバーな気がする。(悪いと言っているのではなく、オーバーでは?と言っているだけです)

xでポストをされた方の投稿内容に
「sin合成はできるけど、cos合成は出来まてーん」
と書かれていて、あれだけいろいろな現場で①と②で「cosθの合成がコテコテに文明化されている」と思っていたのに、1998年以前の受験生みたいに文系化されていない生徒・受験生がいることに驚きました。…と同時に、これは『三角関数の合成はよくわかんないけど「sinθの合成の方法だけ」は何かで解説された通りの方法を使えばできる』だけなのでは。おそらく、式をこねくり回して解いているだけなので、sinθやcosθの係数を文字にしたり、直角三角形の角度が現れない問題にすれば、sinθ の合成も危ういのではないかと思われます。
で、ここからが本題なんですが、sinθの合成ができるんなら、それをcosθに変換すればいいのでは?
(学生の知っている知識を活かした指導をされてもいいのでは…と)
だってsinθとcosθってπ/2(90°)ずれているだけなんですから、sinθの合成が終わった後に、π/2(90°)引けば、cosθが合成された形になります。この方法ならsinθの合成10秒後にはcosθの合成ができていると思います。
要は、cosθの合成を一発でするのではなく、sinθの合成を経由させてもいいのでは?…という提案です。なぜ一発でcosθの合成をしたがるの?…。私の感覚ではcosθに一発で合成するより、こちらの方が早いと思います。
sinθとcosθをつなぐ関係式とcosθが偶関数であることを考慮した↓のような変形でもいいですが…。

\(\displaystyle\sin\theta=\cos \left(90^{\circ}-\theta\, \right)=\cos \left(\theta-90^{\circ}\, \right) \)

この方法は、私が高校2年生の頃、某国民試験の同日模試(1998年)でやったことなんですが…
「合成」って言われたらsinθだろ!」と信じて疑わなかた17歳のJ少年は、問題文の誘導をまずは置いておき、sinθの合成をして90°引いてcosθにしていました。
↓高2だったJ少年が行った機械的な式変形

\(
\begin{align}
g(\theta)&=\sqrt{2}\cos\theta-\sqrt{6}\sin\theta\\
&=-\sqrt{6}\sin\theta+\sqrt{2}\cos\theta\\
&=2\sqrt{2}\sin \left(\theta+150^{\circ}\,\right)\\
&=2\sqrt{2}\color{red}{\cos} \left(\theta+150^{\circ}\color{red}{-90^{\circ}}\,\right)\\
&=2\sqrt{2}\cos \left(\theta+60^{\circ}\,\right)\\
\end{align}
\)

というのも、cosの合成が大学受験の試験問題に出るまでは成の指導に①も②もなかったし、当然cosの合成をしたことなんてありませんでしたから。でも、sin をcosに変換した経験は山ほどあります。
だから、使える知識をうまく活用すれば良いのでは?と当時のJ少年は思っていて、高校3年・浪人生の頃①と②の教育を耳にタコができるほどされたときは不思議でした。ただこの教育もいつかは変わるんだろうなぁ〜と思っていました
が、これだけ情報に溢れている現代でも変わっていないことに驚きました。