昨年に引き続き今年も『未来学力トライアングル』を受講しにはるばる大阪にきました。
昨年(@お茶の水)の受講時の様子はこちら(前編)こちら(後編)です
そういえば今って万博中だったんですね。新大阪駅を降りたら人が多すぎて、フラつき始めました。

『未来学力トライアングル』は教職員用の講座なんですが、この講座は学生版もあって「入試突破のスーパー・トライアングル」という講座名なんだそうですが、な・なんと増設したらしいです。
で、学生版の講座(スーパートライアングル)の雰囲気を醸し出す(?)ために、霜師はそのときと同じ服装で来たそうです。

今の学生はコスパ・タイパ命と誰かが言っていた気がしますが、コスパ・タイパと「真逆の目的地に向かって爆走する」この講座が増設されるということは、目先にとらわれない学生がまだいるのかな…と思って「ほっ」としたりもしました。
目先にとらわれたことばかりをやると結果何にも身につきませんからねぇ。

パンとバカの壁

この講座は3限あるんですが、1限目は主に霜師が担当で、師は「一番人気のパンは何か」という問いかけからスタートしてました。
3位がアンパンや2位がメロンパンなんだそうで、肝心の1位は?

生徒で一番多かった回答はカレーパンだそうで、海上自衛隊出身の私も「例のよって例のごとく」カレーパンを予想したわけなんですが、1位は順当に『食パン(←カーソルでなぞってください)』なんだそうです。

この問いの元ネタは『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか』(ダイヤモンド社)の冒頭にあるそうです。
アンパンは中身、メロンパンは形状…といったイメージがあって、これらの回答に引きづられ、思考の壁(養老氏の言葉で言う「バカの壁」)ができて、本来の回答から遠ざかる…ってことなんでしょうね。
心理学の確証バイアス、行動経済学のアンカリングなどにあたるんでしょうか? 要はバイアスに引っ張られて正常な判断ができていない…ということなんでしょう。ちょっと気になったので、今年の秋学期と来年の春学期にうち大学の学生に聞いてみようかなぁ…と思ったりしました。こんなことを妄想しながらデータを取るのも「意外な発見や気づきがあって」面白かったりもするんですよね。悪趣味って言われそうですが…。

この思考の壁(バカの壁)に阻まれないようにする or 突破するキーワードは前述の書籍の著者によると語彙力になるそうです。
具体的な選択肢に引きづられないようにするためには「そもそもパンとは何か?」という定義(小麦粉を水で練って発酵させて焼いたもの)に戻る or 本質的なことをしっかりと辿っていくことが大事(突破口になる)になる…と。
つまり「語彙」を学ぶ、しっかり意味を辿っていくことで、与えられた情報に惑わされずに思考の壁(バカの壁)を越えることができる…のだとか。「言葉があるから思考が生まれる」ってどこかで聞いたことがありますが、そういうことにつながりそうです。

ゴンドラ猫の実験と視差(しさ:parallax)」について

「視差」は、方向や物の位置の違いで、物の見え方が違うこと。物の認識は、ある観点から見て物事が説明できるだけでなく、別の観点から見たら違って見えるという「視点の差」によって、物事が立体的に浮かび上がってきて初めて可能になる。
では、別の見方を欠落されたらどうなるのか⇒脳神経科学の立場で考えると…

生後間もない猿の頭を固定して育てる実験やゴンドラ猫の実験(イメージ画像はこちら:後世塾の画像で、解説記事はこちら)が「かつて」はあって、多角的な視点を得られないように強制すると、空間的な視野が得られなくなる(視差が得られなくなる、つまり世界が見えなくなる)ようです。

なので、「実際に身体を動かして、様々な視野を得る」ことで視力を持ち、世界を認識する(固定されると、さまざまな視野が生まれない)ようになるんですね。陰謀論などに惑わされないためにも「移動して」多様な視点を持つことが重要ということでしょうか。
自分の身体を動かすことが大事、身体感覚につなげることが大事ということは分かったですが、[ここから脱線]かつての脳神経科学や心理学の実験をみると、とんでもなくぶっ飛んだこと(被人道的なものを含む)をやっていたんだなぁって驚愕します。スタンフォードの監獄実験なんか、今から見たら理解不能で、良心がぶっ壊れます。一部の側面だけ見てウキウキしながら心理学を専攻してしまった学生が見たら、統計学の学習とともに絶望するのでは…と[脱線終了]

話がやや大島師のように脱線してますが、脱線から戻って(もしかすると脱線に次ぐ脱線が本流かもしれませんが)…
視差という観点を考慮すると、3師が東京から大阪に「3万の川を渡って移動してくる」こと自体に意義がある…わけですね。私も「はるばる大阪まで移動して来たことには意義があった」…と信じたい。そういえば『移動する人はうまくいく』が20万部くらい売れているそうですよ。



サルの実験:Jacob W Nadler et al(2009).MT neurons combine visual motion with a smooth eye movement signal to code depth-sign from motion parallax,Neuron.63(4),523-32

猫のゴンドラ実験:Held, R., & Hein, A (1963). Movement-produced stimulation in the development of visually guided behavior. Journal of Comparative and Physiological Psychology, 56(5), 872–876.

森岡毅氏がよく言う3万円川:カギは東西間の3万円の川